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東京高等裁判所 平成5年(ネ)5425号 判決 1994年8月30日

埼玉県戸田市早瀬二丁目二三番九号

控訴人

和合秀典

右訴訟代理人弁護士

鈴木宏明

埼玉県岩槻市大字釣上三五〇番地の七

被控訴人

有限会社脇谷ダイカスト工業所

右代表者代表取締役

脇谷要吉

右訴訟代理人弁護士

松井健二

右輔佐人弁理士

樺澤襄

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人は控訴人に対し、金四七六万円及びこれに対する平成三年七月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文同旨の判決

第二  当事者の主張及び証拠関係

当事者の主張及び証拠関係は、次のとおり付加するほか、原判決事実摘示並びに当審における証拠関係目録に記載のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決八枚目裏六行目「1から3まで」を「1から4まで」と改める。

二  原判決八枚目裏七行目から九行目までを削除する。

三  原判決八枚目裏一〇行目「3」を「2」と改める。

四  原判決一一枚目裏六行目「4」を「3」と改める。

五  原判決一一枚目裏八行目から一二枚目表五行目までを、次のとおり改める。

「1 本件特許権の共有者である村田は、村田が代表者である訴外新和精機株式会社(以下「新和精機」という。)に対し、本件特許権の通常実施権を許諾し、控訴人は、これに同意した。

2 村田は、被控訴人に対し、イ号物件を貸与し、被控訴人は、村田の指揮監督のもとに、その指示する品質、数量の「ナット」を鋳造し、製品はすべて新和精機に販売し、その代金として、材料費に工賃を加えた額を受け取った。

3 以上の事情からすれば、村田もしくは新和精機において、自ら本件特許権を実施したものというべきである。」

六  原判決一二枚目表七行目を、次のとおり改める。

「1 被控訴人の主張1の事実は認める。

2 同2の事実のうち、被控訴人がイ号物件を使用して「ナット」を鋳造したことは認めるが、その余は否認する。

3 同3の事実は否認する。新和精機と被控訴人の関係は、単なる請負契約関係であって、これを超えた指揮監督関係はない。すなわち被控訴人は、自己の判断と計算において、新和精機よりイ号物件の貸与を受け、これを使用して「ナット」を鋳造し、新和精機に納入販売し、その代金の支払いを受けたもので、これは被控訴人自身の事業である。」

理由

一  当裁判所も控訴人の請求は失当として棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり付加するほか、原判決理由説示と同一であるから、これを引用する。

1  原判決一二枚目裏一行目を、次のとおり改める。

「請求原因1から4までの各事実、被控訴人の主張1の事実、同2の事実のうち被控訴人がイ号物件を使用して「ナット」を鋳造したことは、当事者間に争いがない。」

2  原判決一二枚目裏三、四行目「原告の本人尋問の結果」の次に「、当審における被控訴人の本人尋問の結果」を加える。

3  原判決一四枚目裏一行目から六行目までを、次のとおり改める。

「7 そこで、新和精機は、和合ダイカストと同様、ダイカスト製品の鋳造加工を事業目的とする被控訴人に対し、何台かのイ号物件を貸与し、平成三年一月半ばころから同年四月終りころまで、これを使用して「ナット」の鋳造をさせたこと

8 被控訴人は、新和精機から注文のあった数量を鋳造し、出来上がったすべての「ナット」を新和精機に納入し、代金は、材料費と加工賃相当額として一個につき三円九〇銭の支払いを受け、「ナット」納入を終えた後イ号物件を新和精機に返還したが、この間新和精機の従業員一名が一週間に三回ほど来て品質、数量の管理をしていたこと」

4  原判決一四枚目裏八行目から一五枚目表六行目までを、次のとおり改める。

「右事実及び前示争いのない事実によれば、村田は、本件特許権の共有者である控訴人の同意のもとに、新和精機に対し、通常実施権を許諾し、新和精機は、被控訴人に対し、イ号物件を貸与して「ナット」の鋳造をさせ、その全製品の納入を受け、その品質、数量の管理をし、代金として材料費と工賃相当額を支払っていたものと認められる。そうすると、被控訴人は、新和精機の補助者として、イ号物件を使用して「ナット」の鋳造をしたというべきであって、被控訴人の鋳造行為は、本件特許権の実施権者である新和精機の事業としてなされたものということができる。したがって、仮に、イ号物件の構造が本件特許権の技術的範囲に属するとしても、被控訴人において本件特許権を侵害したものということはできない。」

二  よって、原判決は正当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、民事訴訟法三八四条、九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 竹田稔 裁判官 関野杜滋子 裁判官 田中信義)

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